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「不動産・相続総合無料相談−多治見」は、不動産と相続の問題の解決を考える専門家グループです。

TEL. 0572-21-2670

〒507-0032 岐阜県多治見市大日町41−1

不動産と相続のお悩みに3人の専門家が総合的なアドバイスをいたします

「不動産・相続総合無料相談−多治見」は、不動産と相続の問題に3つの分野から解決を考える専門家グループです。

NEWS

  • 岐阜県多治見市大日町にそれぞれ事務所を構える弁護士・不動産鑑定士・土地家屋調査士が,不動産と相続の問題に全員で相談に当たる無料相談会「不動産・相続総合無料相談−多治見」を実施しています
  • おりべくらぶ2016年5月号の記事「おりべくらぶの駅南エリア周辺散歩」で紹介されました。
  • 2013年1月に開始し,多治見市の皆様にご利用いただきまして,おかげさまで,10周年となりました。
  • 次回は,2023年11月16日(木曜日)に開催いたします。予約制ですので、お電話でご予約ください。
  • 3事務所の業務については,多治見ききょう法律事務所(弁護士木下貴子),クニタチ鑑定事務所(不動産鑑定士山村寛),奧村測量登記事務所(土地家屋調査士奥村忠士)の各ページをご覧ください。
  • 2014年7月4日(金曜日)に,不動産鑑定士山村寛が,多治見市内の美・マリアージュ多治見で開催されたPAL研究会朝食会において,「相続と不動産」のテーマで講演をしました。
  • 2015年4月に,不動産鑑定士山村寛も執筆者に加わった相続に関する書籍「転ばぬ先の相続」が出版されました。
  • 2018年3月に,可児市・可児市男女共同参画講座企画運営委員会主催の相続講座「争続をふせぐ3つのコツ〜サヨナラから始まる物語〜」で弁護士木下貴子が講演しました。
  • 2019年5月に,公益財団法人多治見市文化振興事業団主催の相続講座「60代倶楽部「終活はじめて講座 大切な人に送る「愛」」で弁護士木下貴子が講演をしました。
  • 2019年10月に可児商工会議所役員議員懇話会「経営者のための相続・事業承継対策」で弁護士木下貴子が講演しました。
  • 2020年2月に一般社団法人多治見法人会多治見支部主催の経営講演会「経営者のための相続・事業承継対策」で弁護士木下貴子が講演しました。
  • 2021年10月に名古屋税理士会関支部主催の研修「経営者の相続・事業承継における税理士・弁護士の連携」で弁護士木下貴子が研修講師をしました。
  • 2021年11月に株式会社WEB企画が運営する不動産,土地,マンションの売却に関する情報提供サイトである「住まいのキホン」から,多治見ききょう法律事務所が「岐阜県で不動産,相続手続きにおすすめの弁護士」として紹介していただきました。また,不動産・相続総合無料相談−多治見の無料相談についてもご紹介いただきました。
  • 2022年5月に名古屋税理士会多治見支部主催の研修「経営者の相続・事業承継における税理士・弁護士の連携」で弁護士木下貴子が研修講師をしました。
  • 2024年3月に多治見市主催の空き家無料相談会(空き家に関する相談で隣家とのトラブルや相続に関する相談)で弁護士木下貴子が相談員を担当しました。

TOPICS新着情報

2024年3月10日

今回のテーマは「不動産鑑定士ってなに?」です。

山村不動産鑑定士が岐阜新聞の連載コラムにて寄稿した内容が好評でしたのでご紹介します。

「いい仕事してますねぇ~」テレビで「開運!なんでも鑑定団」の放送が始まってから,鑑定士といえば,書画骨董の鑑定士が有名で,同じ鑑定士でも我々不動産鑑定士の存在の薄さを痛感します。

実際,不動産鑑定士による無料相談会で,ある老夫婦が,家に代々伝わる骨董品を持って会場に来られました。両手に下げた風呂敷包みを見た瞬間,思わず苦笑した経験もあります。せっかくですからその骨董品をじっくり拝見させていただきましたが,もちろん価値はさっぱりわかりませんでした。

不動産鑑定士は国家資格で,弁護士や公認会計士,司法書士等と同様にいわゆる「士業」の一つです。主な業務は,不動産鑑定評価書を作成することです。これは,不動産に関する専門知識はもちろん,経済や法律などの知識も駆使して土地や建物などの不動産の「適正な価値」を査定して書面で報告することです。

不動産鑑定評価書は,不動産を売買するとき,相続・贈与をするとき,地代,家賃を決めるとき等に広く利用されています。このほか,公的評価として,地価公示・都道府県地価調査及び相続税標準地や固定資産税標準宅地の鑑定評価などを行っています。さらには不動産に関する知識を生かして,相続や不動産の利用,取引等に関するアドバイスも行っています。

しかし,現在全国で資格者は約9,500名そのうち岐阜県内には約50名が活動中です。他の士業と比べるとかなりの少人数です。これが,皆さんに我々の存在を知っていただけない原因の一つかもしれません。不動産鑑定士が皆さんの身近な専門家になれるよう学生や転職を考えている若い方に是非この業界に来ていただきたいものです。

2024年2月4日

今回のテーマは,「境界立会」です。土地家屋調査士の奥村忠士が担当します。

境界立会とは?

今回は,横浜市まで土地の境界立会確認へ出張してきました時の様子をご紹介します。
依頼者の土地所有者は多治見の方で,代理人として立会を行いました。
立会をする隣接の所有者は,世界的に有名な上場会社と,道路管理者の横浜市役所です。横浜の一等地ですから境界が1cm変ると何百万円と違ってきますので,皆さん真剣です。
私たちは事前に集めた資料を現地の境界杭と確認しながら間口・奥行の距離,面積等を調査しました。既に入っているコンクリート杭が4cm程動いていることが発覚し,修正することを条件に立会は無事終了しました。

土地の測量には必ず誤差が生じます。詳しい説明は省略しますが,状況によっては今回の4cmが誤差範囲とみなされ,境界が決まってしまうこともあります。最近はGPSを利用した衛星測量が主流になり,このような所有者の代理で立会を行う業務が多くなっています。今後皆様が境界を確定・復元するときは,衛星測量での世界測地系座標で登録することをお勧めいたします。また,現地の杭と測量図が一致しているかどうかは充分注意していただきたいと思います。

2023年10月30日

今回のテーマは,「相続税対策の変更点」で弁護士の木下貴子が担当します。

令和5年の暦年贈与制度の改正

年間(1月1日から12月31日まで)に受けた贈与額が110万円以下である場合に贈与税は発生しないという仕組みを利用した贈与の方法「暦年贈与」による相続税の節税対策には注意点があります。

法改正に関わり,暦年贈与による相続税対策の注意点について,付記・変更しました。

早期の相続税対策の必要性

毎年,少しずつ現金・預金・上場株式などの贈与をすることによって,贈与税と相続税の総額を抑えることが可能です。

もっとも,死亡に近接した時期の相続人に対する贈与は,相続税の計算上相続財産に含め,贈与税分を相続税から差し引く処理をすることになっていて,節税効果がありません。

令和5年までの贈与は贈与から死亡までに3年,令和6年以降の贈与は贈与から死亡までに7年が経過しないと,この処理がなされます。

早めの対策が必要ということになります。

その他,相続税対策の注意点について詳しくは,「相続税対策」も参照くださいませ。

2023年2月5日

今回のテーマは,「地籍調査の続編」です。土地家屋調査士の奥村忠士が担当します。

地籍調査とは?

現在,法務局に備え付けられている地図(公図)は,境界・形状などが現実とは違う場合があり,また登記簿に記載された土地の面積も,正確ではない場合もあるのが実態です。そこで、地籍調査を行うことで,これまでの登記簿,地図が更新されることになります。更新された登記簿,地図は,その後の土地取引の円滑化や行政の効率化に役立つことが期待されています。
次回は、地籍調査の重要性について詳しくご紹介いたします。

2022年11月13日

今回のテーマは,「相続手続き,遺産分割手続きの時効,相続手続きの期限」で弁護士の木下貴子が担当します。

相続手続きの期限

父が亡くなったけれど,しばらく相続手続きをしばらくしていなかった。このまま放置していると,相続手続きが出来なくなってしまうのでしょうか?

実は,相続の手続き,遺産分割手続きをいつまでにしなければならない,という法律上の期限はありません。
そのため,長期間経過していても相続手続き,遺産分割手続きをすることは出来ます。

しかし,期間が経過してしまうと,相続人の一人が亡くなってしまうなどして,その子が複数いる場合など,相続人に変動が生じるなど複雑になりやすいので,早期に手続きをすることが望ましいでしょう。

相続関連手続きの期限と制裁

相続手続きができなくなるわけではありませんが,相続放棄の場合,相続の開始があつたことを知った時から3ヶ月以内にしなければいけません。

相続税の申告が必要な場合には,相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内に申告・納付手続も必要です。

また,施行は2024年(令和6年)の4月1日からですが,不動産の相続が発生した際は,3年以内に不動産の登記をしなければなりません。
この場合には,違反すると10万円以下の過料の制裁対象となりますので,早期の登記手続きが必要となるので,注意が必要です。

寄与分・特別受益・特別寄与料

民法の改正により,相続開始から10年又は2023年(令和5年)4月1日(改正法施行)から5年のいずれか遅い日で寄与分と特別受益の主張ができなくなるので注意が必要です。

他の相続人が任意で寄与分,特別受益を認めてくれれば,期限経過後も,これらを考慮した遺産分割は可能ですが,争いがある場合,これらの主張がなされることで,相続紛争がとても長期化することが多かったこともあり,期限経過後には法的な主張を裁判所で取り上げて,強制的に判断してもらうことができなくなり,この場合には,法定相続分通りで分ける,ということになりました。

また,相続人ではない被相続人の親族で,被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者(これを「特別寄与者」といいます。)は,相続人に対し,寄与に応じた額の金銭を請求することができる制度も民法改正により,新設されており,この金銭のことを「特別寄与料」と言われています。

この特別寄与料の支払について,も特別寄与者と相続人との間に協議が調わないとき又は協議をすることができないときには,家庭裁判所の調停又は審判の手続を利用することができますが,特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6ヶ月を経過したとき,又は相続開始の時から1年を経過したときは,出来ないとされています。

この制度はすでに施行されており,2019年(令和元年)7月1日より後に発生した相続(死亡日が令和元年7月1日以降)の場合に適用されます。特別寄与料は,遺留分と同じような感覚で,内容証明郵便などで請求しても,この期限は延長されませんので,期限内の調停の申立てが必須になります。
長男の妻など相続人でない人が被相続人に特別の寄与をしている場合に法的に請求できるように制度設計がされたものですが,期間は非常に短いので注意しましょう。

その他,相続手続きの期限や不利益について詳しくは,「相続手続き・遺産分割に期限はある?期限経過による不利益と注意点」「遺産相続手続に期限はある?」も参照くださいませ。

2022年4月10日

今回のテーマは,「地籍調査」です。土地家屋調査士の奥村忠士が担当します。

地籍調査とは?

あなたは,自分の土地を正確にご存じですか?

土地に対する執着心が強いといわれている日本人ですが,自分自身の土地を正確に把握している人は意外に少ないのではないでしょうか。
現在,土地に関する記録として広く一般に利用されている公図(字絵図)の約半分は,明治時代の地租改正によって作られたもので,当時の測量方式が稚拙であったり,その後の土地の異動により,現況の土地と必ずしも一致するものではありません。

地籍調査とは,法務局の公図及び登記簿を基に,それぞれの土地に関する所有者,地番,地目及び境界の調査と面積に関する測量を行い,精度の高い地図等を作成し,土地における地籍の明確化を図ることを目的として,国土調査法に基づき実施される事業をいいます。
つまり,地籍調査とは,人における戸籍の土地版「土地の戸籍」といえるものです。

2021年12月18日

今回のテーマは2021年10月に名古屋税理士会関支部の研修としてお話した「経営者の相続・事業承継における税理士・弁護士の連携」の中から,「経営者の相続・事業承継でトラブルになりやすい3つの財産とは?」です。

1 自社株式

2015年8月16日の記事に書きましたが,自社株式は,何も相続対策をせずに経営者が亡くなってしまった場合,株式の共有という状態になります。そのため会社の意思決定が困難となり,場合によっては,経営権を奪われてしまうこともあります。

自社株式を経営者が過半数以上,まだ所有している場合には,トラブルになりやすい資産ですので,対策をするよう注意しましょう。

2 事業用不動産

こちらも,2015年8月16日の記事で少し触れていますが,不動産も,何も相続対策をせずに経営者が亡くなってしまった場合,相続人が共有している状態となります。
この場合,経営者の死亡後,遺産分割協議をして,相続人のうちだれが取得するのかを決めることになり,それが,会社が事業に使っている工場の敷地だったり,工場という建物そのものといった「事業用不動産」の場合,合意が出来ないと事業の継続に支障が生じます。事業を継承する後継者が事業用不動産を取得しようとしても,他の相続人が納得するような代償金等の支払いが出来ないと,不動産を取得して営業を続けることも困難になります。

また,2015年9月6日の記事で山村不動産鑑定士が触れていますが,とりあえず,不動産を相続人で共有にしておこう,とした場合にも,共有状態で放置すると,タイミングよく売却などの処分をすることが出来ず,トラブルになりがちです。対策をするよう注意しましょう。

3 会社への貸付金(事業主貸)

経営者が会社に対して,事業資金を貸付ける(給料をもらわず,貸付金とするなど)事は少なくないと思います。そのまま,経営者が亡くなってしまった場合には,これもトラブルになりやすいので注意しましょう。
経営者の会社への貸付金は,債権という財産として相続人の法定相続分に応じて当然分割されます。

そのため,後継者でない相続人から直ちに返済するように迫られて,返済することで事業資金の資金繰りが逼迫し,事業状況が悪くなってしまう事例も生じています。

以上の3つの資産を経営者が持っている場合には,トラブルになりやすいので,相続後に事業継続が困難にならないように相続対策,事業承継対策をすることをお勧めします。

2021年7月10日

今回のテーマは「事業承継の柱である株式の移転」です。
弁護士木下貴子のビジネスパートナーのひとりである向井正義税理士に,記事を書いていただきました。

1 株式贈与とは

新型コロナウイルス感染症の影響により、業績が芳しくない会社もあるかもしれません。業績回復は,急務ですが、事業承継の入り口である株式贈与については検討の価値があるかもしれません。
後継者が決定していれば、会社の支配権である株式を後継者に移転する必要があります。移転する方法としては,「贈与」や「売却」がありますが,親族に株を買ってくれというのは難しく,無償であげることになる贈与 が現実的でしょう。ただし,無償でモノを貰う贈与は,贈与税の対象となります。

2 株式評価の基となる金額は?

贈与税は,無償で「貰う」ことに課税されるため,貰った株式の評価額が変わると,贈与税額が増減します。
非上場企業の株式については,下記の2つの価格を勘案して評価額が決まりますので,いずれかの価格が下落していれば,贈与により負担する税額が減少することになります。それぞれ,コロナ禍の影響が出ている可能性がありますので,自社の株価への影響を確認してください。

純資産価額

時価純資産額(資本+内部留保) 。コロナ禍の影響により,赤字となった場合,内部留保が減るため,評価減になる可能性がある

類似業種比準価額

上場企業と以下の要素を比較。配当・利益・純資産 コロナ禍の影響により,業種によっては,上場企業の株価も厳しい状況にあり,評価減になる可能性がある

3 事業承継のハードル 贈与税はどのくらいかかるのか?

お手元に決算書をご用意ください。自社の貸借対照表の純資額の概算産額合計はいくらになっているでしょうか。これが,2の「純資産価額」の計算の基になります。土地など含み益がある資産は含み益を加算し,保険の解約金など簿外資産も加算します。

実際には,純資産価額より低くなることが多い「類似業種比準価額」も考慮するため,必ずしもイコールではありませんが,下記贈与税の負担(概算額)をご確認ください。(※親子間の特例贈与を前提としています)

  • 株式の価額 1,000万円→贈与税額177万円
  • 株式の価額 5,000万円→贈与税額2,049万円
  • 株式の価額 1億円→贈与税額4,799万円
  • 株式の価額 2億円→贈与税額1億299万円
  • 株式の価額 3億円→贈与税額1億5,799万円

4 分割して贈与すると税負担が減る!?

3のように,一時に贈与しようとすると,多額に贈与税がかかります。しかし,下記のように分割して贈与を行うと,年間110万円の基礎控除が複数回使えることに加えて,累進課税の贈与税の税率も下がるため,後継者の税負担は大きく減少します。今年,年間110万円の基礎控除を使うためには,年内の贈与が必要です。

5,000万円の株式を一時に贈与する場合

(5,000万円−基礎控除110万円)×贈与税率55%−640万円=2049.5万円

分割して10年間で贈与する場合

(500万円−基礎控除110万円)×贈与税率15%−10万円=48.5万円
贈与を10年繰り返すと,贈与税額 485万円

(注:暦年贈与については税制改正大綱にもあるように,廃止されるという話も持ち上がっていますので,ご注意ください。)

5 まずは自社の株価がいくらか,把握しましょう!

事業承継は先代の年齢や,株式の評価額により,様々な対策があります。
まずは,自社の株式がいくらの評価になるのか,確認してみてはいかがでしょうか。

2021年3月7日

今回のテーマは,商業ビルの一室を貸している場合の「建物の賃借人に明渡しを依頼する場合の立退料」です。

立退きを求められる場合とは

建物の賃貸借については,「正当な事由」があると認められる場合でなければ,賃借人に対して,解約の申入れをすることが出来ないとされています。
そのため,ビルの一室から,立退きを求める場合には,古くなってきたので,建て替えをしなければ,危険である場合など,建て替えの必要性がある場合でなければ認められません。放置するとどの程度危険なのか,などによって「正当な事由」があると認められれば,立退きを求められることになります。

建物賃貸借の立退料の相場

「立退料」は賃借人から当然に求められるものではないのですが,「正当な事由」が弱い,とされる場合には,立退料も考慮して明渡しを認めるべきか,という判断がされます。
そのため,「立退料」の相場というのは事案によって異なり一律ではないことになります。
裁判例では,「賃貸借契約時成立の時期及び内容,その後における建物利用関係,解約申し入れ当時における双方の事情を総合的比較考慮して」決めるとされています。
明渡しを求める側にとって,立退料をいくらにするのか考えるのは難しいところですが,移転することによる賃借人の不利益を補填する趣旨から,家賃や仲介料,引越し料,内装料,移転雑費,借家権価格,内装費,営業補償などを考えて提案することになるでしょう。

2020年3月6日

今回のテーマは2019年7月1日から施行された民法(相続法)改正によって制度が変わった「遺留分侵害額請求権」です。
(2019年6月30日以前に死亡した方の相続での場合には,法改正前の「遺留分減殺請求権」となり,この記事の内容とは異なります。詳しくは多治見ききょう法律事務所までお問い合わせください。)

遺留分侵害額請求の効果(概要)

法改正前まで生前贈与,遺言によって,全く遺産がもらえなかった相続人,又は,遺産をもらえても他の相続人に比較してとても少なく「遺留分」に相当する遺産を取得できない相続人には「遺留分減殺請求権」がありました。例えば生前贈与した株式について遺留分減殺請求権が行使できた場合,遺留分に相当する「持分」を取り戻すことになり,結果として,株式が「共有」されることになっていました。民法改正により,遺留分の制度が「遺留分侵害額請求権」となり,遺留分侵害額請求をすることによって,不足分を「金銭」で支払う制度となりました。

遺留分とは

遺留分とは,自分の財産(遺産)は自由に処分できるという原則の例外にあたる,法定相続人が最低限相続できる持ち分のことです。
例えば,父の遺言があって,長男にすべて相続させると書かれていた場合,何もしなければ妻(母)や他の兄弟は,父の財産をまったく相続できません。
そのとき,相続できなかった他の相続人には,不平等感や不信感,今後の生活への不安が生じます。
法律(民法)では,このような相続人の期待が完全に裏切られることがないよう,財産を自由に処分できるという原則と調整する制度として「遺留分」を定めています。実際には,「父」名義の財産(遺産)であっても,夫婦が協同して貯めた預金であったり,子どもが家業を手伝ってくれたり,介護をしてくれたおかげで残せた遺産である場合も多いので,完全に自由な処分ができることを制限している側面もあると思います。

今後準備すべきこと

遺留分に相当する支払いは,今後は「金銭」でしなければならないことになるので,ますます現金化しやすい資産を準備しておく必要が高くなります。金銭を支払うことができない場合,やむを得ず,不動産を渡したいという場合も考えられます。法改正前は双方が合意できれば特に問題は生じなかったのですが,法改正後は金銭で支払う義務があるところを金銭の支払に代えて不動産を渡す「代物弁済」となります(「代物弁済」とは債権者の承諾を得て,本来の金銭等の債務の支払いに代えて,別の財産で返済することです)。
代物弁済で財産を渡すときは,売却した場合と同様に,譲渡益があれば課税がされることになっています。遺留分侵害額請求を代物弁済で解決したときも,計算上譲渡益があると課税対象となりますので,注意が必要です。
予め,遺言で,遺留分に相当する不動産については相続人を指定して相続させることを定めておく等の準備も重要になるでしょう。

2019年7月29日
今回のテーマは「個人事業主向け事業承継税制」です。
弁護士木下貴子のビジネスパートナーのひとりである西村賀彦税理士の記事を書をご紹介します。

「 個人事業主向け事業承継税制(個人版事業承継税制)」


平成31年1月1日以降の贈与・相続について適用される
個人の事業用資産についての納税猶予(個人版事業承継税制)について、
既存の小規模宅地等(特定事業用宅地等)との
比較を通じてご説明いたします。

1.個人版事業承継税制の適用要件(一部)について

2.贈与・相続税額が免除される場合と納付が必要となる事由
3.その他の懸案事項について

詳しい内容はこちらから↓
http://www.nishi-tax.net/wp-content/uploads/taxnews201906.pdf

2019年6月2日

今回のテーマは「事業承継税制(非上場株式についての贈与税・相続税の納税猶予)」です。
弁護士木下貴子のビジネスパートナーのひとりである向井正義税理士に,記事を書いていただきました。

1 平成30年度改正

後継者が前代表者から贈与・相続により非上場株式を取得した場合,
贈与税・相続税の納税が猶予される制度があります。
平成30年度税制改正で、従来の制度(一般制度)に加えて創られた,使い勝手が良くなったといわれる特例(特例制度)について解説します。

2 適用期限

→10年間限定の制度
平成30年(2018年)1月から平成39年(2027年)12月までの贈与・相続について受けられます。
(既にあった一般制度は,期限なし)

3 事前計画(特例承継計画)

事前にどのように承継するかの計画が必要
認定支援機関の指導・助言のもと作成した特例承継計画を、平成30年4月から35年3月までに都道府県に提出し,確認を得る必要があります。

4 対象株式数

適用対象となる株式数の上限が撤廃
対象株式は「全株式」
(一般制度では,株式総数の3分の2が上限)

5 納税猶予割合

相続税の納税猶予割合も100%に
その株式に対する贈与税額、相続税額の全額が猶予されます。
(一般制度は,相続税額の80%)

6 対象となる後継者数

最大3名(一般制度は1名のみ)
→後継者全員が代表者になる必要があることから、事業の承継という点で慎重な判断が必要

7 複数の贈与者からの承継が可能

原則として、前代表者から贈与を受けた後翌年以後5年間に限り,前代表者以外(第三者など)からの贈与についても適用が可能です。
→制度上,贈与者が亡くなったときにはその株式が相続税の対象となるため,
 相続人から見ると第三者である後継者がその相続に加わるという難しい問題が生じる

8 雇用確保要件

実質廃止に。雇用確保要件(当初5年間平均8割確保)を満たさない場合でも,「一定条件のもと継続」
(一般制度では,要件を満たさなければ猶予が打ち切りとなり納税が必要)
 ※一定条件とは・・・満たせなかった理由と認定支援機関の所見を記載した書類を都道府県に提出すること など

9 事業の継続が困難になった場合の免除

経営環境の悪化など一定の要件を満たす場合で,特例承継期間(5年)経過後に株式を売却したり,会社を解散等したときは,原則として売却した額,解散等した時点の株価で贈与税・相続税を計算し直した金額を納付。
→計算し直した金額が当初の猶予税額を下回る場合、下回った部分は免除となる(一般制度では,株式売却・解散等の場合は当初の猶予税額をそのまま納付する必要あり)

10 その他

・代表者が若いなどの理由により2027年12月までに事業承継が見込まれない場合はあまり意味を感じない制度かもしれません。
 但し,不慮の事故ということを考えれば,特例承継計画を提出しておくという手はアリです(提出しても、制度を使う義務はありません)
・長期にわたって手続きが必要なこともあり、実際に猶予される税額等も考慮しながらご自身にとって採用した方が良い制度がどうかの検討が必要と考えます。

『相続対策は思い立ったが吉日』という動画がありますので、ご覧ください!
 ⇒ 動画『相続対策は思い立ったが吉日』

2019年2月23日
今回のテーマは「民法改正に伴う配偶者居住権の評価方法」です。
弁護士木下貴子のビジネスパートナーのひとりである西村賀彦税理士の記事を書をご紹介します。

「 配偶者居住権の創設(平成31年税制改正大綱)」


昨年末に発表された税制改正大綱ですが,相続税に関する改正のうち,民法改正に伴う処置として配偶者居住権に関する評価方法が定められています。
以下で民法改正の制度趣旨からご説明します。

1.配偶者居住権とは


2.評価方法

  1.建物
   ・建物に係る配偶者居住権
   ・配偶者居住権の対象となる建物の所有権
  2.土地
   ・建物の敷地の利用権
   ・建物の敷地の所有権

3.その他の懸案事項について


続きはこちら↓
http://www.nishi-tax.net/wp-content/uploads/201902_taxnews.pdf
2018年9月16日
今回のテーマは「地籍調査」です。土地家屋調査士の奥村忠士が担当します。
あなたは,自分の土地を正確にご存じですか?
土地に対する執着心が強いといわれている日本人ですが,自分自身の土地を正確に把握している人は意外に少ないのではないでしょうか。
現在,土地に関する記録として広く一般に利用されている公図(字絵図)の約半分は,明治時代の地租改正によって作られたもので,当時の測量方式が稚拙であったり,その後の土地の異動により,現況の土地と必ずしも一致するものではありません。地籍調査とは,法務局の公図及び登記簿を基に,それぞれの土地に関する所有者,地番,地目及び境界の調査と面積に関する測量を行い,精度の高い地図等を作成し,土地における地籍の明確化を図ることを目的として,国土調査法に基づき実施される事業をいいます。
つまり,地籍調査とは,人における戸籍の土地版「土地の戸籍」といえるものです。
2017年10月8日

今回のテーマは「負動産を切り捨てろ」です。

山村不動産鑑定士が経営者向け朝の勉強会PAL朝食会にて,「資産ではなく,負債になってしまう不動産(≒負動産)」のテーマで話をしましたので,弁護士の木下貴子がシェアします。

全国に「売れない」・「貸せない」不動産(「負動産」)が増えています。

最近の地価は,全国が同じ傾向を示すのではなく,傾向が3極に分かれる三極化が進んでいます。

【第1極】
バブル期の価格を上回って上昇
たとえば,国税庁が発表した2017年の路線価は,東京都中央区銀座5の「鳩居堂」前の1平方メートルあたりの価格が4032万円となり,過去最高だったバブル直後(1992年)の3650万円を上回る。

【第2極】
バブル期以降地価下落が続いたが,アベノミクス以降横這い乃至若干地価が上昇
たとえば,岐阜県では,岐阜駅前,大垣駅前

【第3極】
バブル期以降の地価下落が止まらない地域
たとえば,岐阜県では飛騨古川地区
多治見市の笠原地区もこれにあたる

深刻な人口減の中,空家はどんどんと増えています。
もはや,自宅が資産と言える時代ではありません。
特に,郊外ベッドタウンの中古住宅は売れません。
岐阜県内では,第1局と言えるような地域はない。
家族形態が変化し,共働きが増え,郊外の緑豊かな環境より,職場,保育所に近いという利便性で住宅が選択されるようになっています。

これまで言われていた「財産3分法」(保有する財産を預貯金,株式,不動産という3つの資産に分散して投資をすること)の「不動産」がどこの不動産でも何とかなった時代は既に終わっています。
ご自身の所有する不動産を選別し,負動産は売れなくなる前に売ることが大事です。

2017年7月16日

今回のテーマは「相続についての対策」です。
弁護士木下貴子のビジネスパートナーのひとりである向井正義税理士に,記事を書いていただきました。

1 相続税を納める割合

平成27年1月からの相続税の改正によって,相続税を納める割合が伸びています(お亡くなりになった方のうち,平成26年は4.4%,平成27年は8.0%と約1.8倍)。
弊事務所でお手伝いさせていただいています相続税の申告につきましてもこれまでの2倍程度に増えているのが現状です。
今回は,相続が発生する前(生前)の対策についてです(ちなみに対策は相続税の節税だけではありません)。

2 相続対策の基本的な考え方

家「族」が「争」わないための対策、①が一番重要です。
 ①争族対策(分割対策)
 ②納税資金対策 
 ③節税対策    → ①〜③の順で行うのがポイントです。

3 現状の把握

対策をする前に,現在の状況を把握します。
 ①所有資産の把握
 ②相続税の概算額の試算
 ③資産の活用状況・納税資金の有無

4 争族対策(分割対策)

現状の把握ができたら,いよいよ対策に入ります。
対策のなかで一番重要で難しいのがこれです。
いざ相続が発生した場合に,亡くなった方(被相続人)の財産をどう分けたらいいか。
残された方(相続人)で納得できる分け方ができないと争いになります。
そのためにも,生前に財産の分け方について方向性を決めておくのが良いです。
一般的には遺言が有効とされていますが、最近は『信託』を利用される方もいます。
ときどき,「うちは財産が少ないから、対策なんて必要ないよ」とおっしゃる方もいます。
むしろ,財産が少ない(例えば、自宅といくらかの預貯金)と分けることが難しいという問題があります。兄弟が複数いた場合に、親と同居していた長男が自宅を相続するとなると,他の相続人は残ったいくらかの預貯金だけを分けることとなってしまい,財産が分けられなくなってしまいます。
あとは,「兄弟,仲がいいから」。これもお金が絡むと、ときに配偶者が口を出したりして・・・。

5 納税資金対策

相続税は現金で一括で納めるのが原則です。
まずは相続財産と相続人所有の金融資産(現預金,上場株式等,生命保険金)で試算した相続税を準備できるかどうかがポイントになります。
できなければ,生命保険への加入,不動産の売却などの検討が必要となります。
現金での納付ができない場合は,物納(ぶつのう)といって,不動産や国債・株式などで納付することもできますが,細かい要件があり,最後の手段と考えるのが良いと考えます。

6 節税対策

最後に相続税を減らす節税対策です。
相続税は被相続人が亡くなったときの法律で計算するものであり,節税については税制改正のリスクや経済情勢の変化など不確定要素がつきまといます。対策した時点では良くても,将来にわたって良い対策だったかどうかはわかりません。
ですから,節税対策は無理なく,偏りすぎないようにするのが重要です。
最近は,節税策の一つとして,建設業者等からの提案で,銀行からお金を借りてアパートを建てるという対策を取られている方も多いようですが、将来的には空室リスク等もあり,慎重に検討することが必要です。

「残された家族がうまくやってくれる」とおっしゃる方もいますが,残された家族が困ったり,争ったりすることがないように,相続税が出る方も出ない方も,生前に『争族対策』をしてあげておくことが大切だと考えます。

『相田家の相続』という動画がありますので、ご覧ください!
 ⇒ 動画『相田家の相続』

2017年1月28日

今回のテーマは「預貯金の相続」です。

1 相続預金の払戻しに関する重要な最高裁決定

最高裁大法廷は,平成28年12月19日預貯金と遺産分割に関する重要な決定をしました。
預貯金についても当然に法定相続分で分割されてしまう,のではなく,遺産分割の対象となることが,今回の決定ではっきりしたのです。
詳しくはこちら:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/354/086354_hanrei.pdf

2 今回の決定による実務上の変更

(1)銀行等金融機関の実務への影響
今後,銀行等は各相続人からの法定相続分による預貯金の払戻し請求には,応じないことともあるでしょう。(これまで通りの取扱をするという金融機関もあるようですが)
つまり,相続人が合意(遺産分割協議)して払戻し手続きをする,または,裁判所で預金の帰属を決めてもらう(審判)ことで払戻し手続きをする,という方法でしか,預金の払戻し請求ができなくなります。
銀行等の実務としては,遺産分割の終了(調停又は審判による)まで預貯金が凍結されてしまうことが考えられます。

(2) 家裁実務への影響
今までは,相続人の全員の同意があった場合のみ,預貯金を遺産分割の対象とすることができたのですが,今後は、相続人の同意の有無にかかわらず,遺産分割の対象となります。しかし,これまでは遺産が預貯金のみであって,各相続人が法定相続分に応じて金融機関から払戻しを受ければ相続が終了していた場合にも,今後は,遺産分割手続が必要となってしまうということになります。

3 これまでの判例・実務

これまでの判例・実務では,相続預金は当然分割される(可分債権と考える)ので,話合い(遺産分割協議)しなくとも,法定相続分で,いきなり,銀行等に払戻請求ができる,とされてきました。
つまり,100万円の相続預金があり,二人の子が相続したような場合,話合いによって,誰が払い戻すかを決めなくとも,各自の法定相続分である2分の1の持分に応じて,50万円ずつ払戻請求ができたのです。
もっとも,銀行等がこの払戻請求に応じないことも,古くは多くあり,裁判によって払戻請求をしてきた,という実態がありました。最近になって,やっと,裁判をしなくとも,法定相続分に応じて払戻に応じてくれる・・という状況になっていたのです。

今までの判例・実務はこちら↓

「相続財産中の可分債権は法律上当然に分割され,各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継する。」(最判昭29・4・8)
詳しくは,http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/093/056093_hanrei.pdf

「相続財産中に可分債権があるときは,その債権は相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり,共有関係に立つものではないものと解される。」(最判平16・4・20)
詳しくは,http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/575/062575_hanrei.pdf

そのため,預金債権については,「相続開始(被相続人死亡)と同時に当然に相続分に応じて分割され,各共同相続人のものになる」ので,遺産分割の手続は要らない,そもそも遺産分割手続の対象とすることができない,とされてきました。

もっとも,「遺産分割調停」の段階では,預金も含めて話合いを進め,当事者間で「預金債権についても遺産分割の対象とする」という合意がある場合には,預金債権についても遺産分割の対象として,審判で分け方を裁判所が決める,という実務上の取扱はなされていました。

これは,話合いで進められる場合には,預金を含めて考えることができれば,不動産,株式などの遺産をどのように分けるか,預金の配分を変えることで柔軟に調整ができるところ,預金は当然に法定相続分通りに分割されてしまって,残りの遺産だけで分け方を決める,というのでは,解決方法として限界がある,という事があったと思います。

他方,協議が進まなくても,現金としてすぐに使える「預金」を早く取得したい,という希望がある場合には,「原則」どおり,法定相続分に基づいて,銀行等に払戻請求をすることもできていたのです。
今回の裁判所の判断により,このような対応ができなくなったことが,大きな実務上の変更点になります。

4 類似の問題

これまでにも,(旧)郵便局定額貯金,投資信託,国債,株式,現金は,相続開始時(被相続人の死亡時)に当然に分割される,という「考え方」を裁判所はしておらず,法定相続分に応じた支払請求をすることはできない,とされていました。

今までは,遺産分割調停で合意ができない場合に,不動産,現金等の遺産の分け方は,審判によって裁判所が決めてくれるのに,なぜ「預金債権」だけが,決めてもらえず,裁判等によって直接銀行等に払戻請求をすることになるのか,説明しづらく,世間一般の方にはわかりづらいだろう,と感じていました。
これが,今回の判断で,統一的に「遺産分割の対象」となり,シンプルな「考え方」になったと言えます。

5 今回の最高裁の決定の事実関係

今回の最高裁の決定の事案は,死亡した男性の遺族が男性の預金約3800万円について,別の遺族が受けた生前贈与などと合わせて遺産分割するよう求めた審判案件でした。

もし,この預金が遺産分割の対象となるのであれば、別の遺族が受けた生前贈与などについて特別受益として取扱われる可能性があり、生前贈与を受けていない遺族にとっては、遺産分割に際して、預金の分配に関し有利な取扱いを受けることが考えられます(別の遺族が受けた生前贈与が大きな金額であった場合には、大きな生前贈与を受けた遺族に対しては、この預金の遺産分割としては、配分がなくなることもあり得ます)。

もしこの預金が(従前の判例どおりに)遺産分割の対象とならないとすると,別の遺族が受けた生前贈与を考慮することなく,それぞれの相続人(遺族)は金融機関に対してその法定相続分に基づいて各人が分割された預金の払戻しを請求することができることになります。
反対に,遺産分割の対象となるのであれば,既に生前に贈与を受けた遺族には,これを考慮して,預金の払戻し請求ができない,もしくは,出来る金額が低くなる,と言う判断となります。
そのため,預金について遺産分割の対象となるのか,ならないのかということが実際上の大きな差を生じる問題となるのです。

6 最高裁が今回の判断をした理由

最高裁は,「共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。」と判断しました。

そして,その理由としては,
(1)「遺産分割においては被相続人の財産をできる限り幅広く対象とするのが望ましく,遺産分割手続を行なう実務上の観点からは,現金のように評価についての不確定要素が少なく,具体的な遺産分割の方法を定めるに当たっての調整に資する財産を遺産分割の対象とすることに対する要請も広く存在する〜中略〜具体的な遺産分割の方法を定めるに当たっての調整に資する財産であるという点において〜中略〜預貯金が現金に近いものとして想起される」
(2)「預貯金契約は,消費寄託の性質を有するものであるが,預貯金契約に基づいて金融機関の処理すべき事務には,預貯金の返還だけでなく,振込入金の受入れ,各種料金の自動支払,定期預金の自動継続処理等,委任事務ないし準委任事務の性質を有するものも多く含まれている〜中略〜普通預金債権及び通常貯金債権は共同相続人全員に帰属する…ところ,〜中略〜上記各債権は口座において管理されており、預貯金契約上の地位を準共有する共同相続人が全員で預貯金契約を解約しない限り,同一性を保持しながら常にその残高が変動しうるものとして存在し,各共同相続人に確定額の債権として分割されることはないと解される。」
(3)「定期貯金についても〜中略〜契約上その分割払戻しが制限されているものと解される。」
などとしました。

つまり,
(1)現金と近い性質を持つ預金債権を遺産分割の対象とすることで調整しながら遺産分割の方法を決められる。
(2)普通預金の契約であっても,口座を開設すると,以後預金者がいつでも自由に預入れや払戻しをすることができる継続的取引契約であるため,その結果発生した預貯金債権は,1個の預貯金債権として扱われる。特に,相続開始(死亡)後の入出金により,残高が変動してしまった場合に,既に分割債権となってしまった後の処理の問題を避けられる。
(それまでは,相続開始時に一旦法定相続分で分割されてしまった預金が,その後に引き落とされたり,入金があったりした場合に,どのように考えるべきか,という問題がありました。)
(3)郵政民営化法の施行により,日本郵政公社は解散し,その行っていた銀行業務は株式会社ゆうちょ銀行に承継されたけれども,その基本的内容が定期郵便貯金は同じで,契約上その分割払戻しが制限されているものと考えるべき(先述したとおり,従前の判例でも,定額郵便貯金については,性質上,当然に分割されないとされていたため,なぜ,民営化したら,分割払戻が許されるのか,という問題に繋がった)。
という理由から,普通・定期の預貯金の区別なく,遺産分割の対象と認める,という結論でした。

7 新たに生じうる問題と対応

(1)相続開始を知ったときから10か月という相続税納期限内に遺産分割協議ができていないと,相続税を納めるために預金の払戻しをして使うことができず,相続税が納付できないというおそれがでてきます。
(2)そのため,預貯金について,早期の現金化を可能とするためにも,遺言書の作成をしておいて預金の払戻しができるようにしておくこと,生命保険等を利用して,現金として納税資金を準備できるようにしておくことが,今まで以上に必要なものとなってくると思います。

2016年9月11日

今回のテーマは「不動産相続で有利となる不動産・不利となる不動産」です。

遺産分割協議や遺産分割調停で,取得するとよい不動産は,利用するのであれば,利用目的にあった不動産,売却するのであれば,売れる見込みのある不動産です。
しかし,利用する予定の不動産であっても,後の世代の子どもたちが,ずっと使い続けるとは限らず,売却する可能性もあると思います。その際に,有利となる不動産・不利となる不動産は何でしょうか?
山村不動産鑑定士が経営者向け朝の勉強会PAL朝食会にて,「不動産と税金」のテーマで話をしましたので,弁護士の木下貴子がシェアします。

結論を言いますと,有利となる不動産は,「不動産を購入したときの領収書のある」不動産です。

具体的事例で考えてみましょう。
(但し,税金に関する細かい点は分かりやすくするため,概要となっていますので,詳細は税理士にお尋ね下さい。)

Aさんの所有土地概要

時価  2,000万円  面積 300㎡
固定資産税評価額  1400万円
取得原因  平成26年10月 相続
昭和60年にAさんの父親が1,500万円で購入
現況  更地

土地保有に関する税金
・土地の固定資産税  196,000円
      = 14,000,000円×1.4%
・土地の都市計画税   42,000円
      = 14,000,000円×0.3%
・合計 年額238,000円

売却代金・経費

Bさんに平成28年10月に2,000万円で売却
①売却代金等
・売却代金 20,000,000円
(固定資産税清算金 119,000円
         = 238,000円×6か月/12ヶ月)
②経費等
・印紙税     10,000円
・仲介手数料 712,800円 
   = (20,000,000円×3%+60,000円)+消費税
・譲渡所得税
  譲渡金額−(取得費+譲渡費用)×税率

譲渡所得税の額

  1. 15,000,000円の領収書がある場合
    893,000円 ≒((20,000,000円+119,000円)
      −(15,000,000円+10,000円+712,800円))
     ×20.315%
  2. 15,000,000円の領収書がある
       +相続税を1,600,000円支払っていた場合
    568,000円 ≒((20,000,000円+119,000円)
      −(15,000,000円+1,600,000円+10,000円
      +712,800円))×20.315% 
  3. 同年にバブル時に5,000,000円で購入した別荘地を1,000,000円で見切り処分した場合
    80,000円 ≒
    ((20,000,000円+119,000円+1,000,000円)−(15,000,000円+5,000,000円+10,000円+712,800円))×20.315%
  4. 領収書がない場合
    概算取得費  20,000,000円×5%=1,000,000円
    3,737,000円 ≒((20,000,000円+119,000円)
       −(1,000,000円+10,000円+712,800円))
       ×20.315%

この事例で領収書がない場合との譲渡所得税の差額

  1. 15,000,000円の領収書がある+相続税を1,600,000円支払っていた場合 との差額
    3,737,000円ー568,000円=3,169,000円
  2. 同年にバブル時に5,000,000円で購入した別荘地を1,000,000円で見切り処分した場合との差額
    3,737,000円ー80,000円=3,657,000円

そのため,相続で不動産を取得する際には,利用のしやすさ,売りやすさで選ぶのももちろん重要ですが,購入したときの領収書がある不動産を選ぶ,というのも大事ですね。
また,相続の場合に,相続人が相続不動産を自分の名義に変更するときには,権利証は要りません。ですから・・・以下のようなことが言えそうです。

  • 権利証なくしても領収書なくすな!
  • 相続するなら領収書付き不動産

そして,
相続した不動産の取得原価,取得期間は被相続人を引き継ぐ
売却損が出る不要不動産は,売却益が出る不動産と一緒に売却 (損益通算)
を意識すると,さらに節税になることも多いようです。

今後,自分のお父様,お母様などから不動産を相続する予定がある方は,購入時の「領収書はあるの?」と尋ねてみましょう。「領収書」がない場合には,再発行の手続きをしてもらうなど,準備をすると良いでしょう。
また,ご自身の購入した不動産についても,領収書を揃えて,子どもさん達に引き継げるよう準備をされておくといいですね。

2016年7月23日

今回のテーマは,「空き家に対する税制改正」です。
弁護士木下貴子のビジネスパートナーのひとりである向井正義税理士に,記事を書いていただきました。

空き家に対する税制改正

近年,空き家の問題を聞くことが増えました。空き家(別荘や売却等のために空き家になっているものを除く)は,全国に318万戸(平成25年 総務省資料)もあり,年々増え続けているようです。この空き家の問題に関連して,相続した空き家を売却した場合と空き家を持っている場合について税制改正がありました。

空き家を売却した場合 → 優遇されます

相続した一定の空き家を売却した場合の譲渡所得について,最大3,000万円を控除できます。
<一定の空き家>
・相続直前において「亡くなった方」が一人暮らしをしていた家屋(相続で空き家になった)
・昭和56年5月31日以前に建てられた家屋
・区分所有建物でないこと(マンションは対象外)
<その他の要件>
・平成28年4月1日から31年12月31日までに売却すること
・相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却すること
・売却代金が1億円以下であること
・相続時から売却時まで事業用,貸付用,居住用に使われていないこと
・耐震基準に適合するようリフォームしてある家屋であること ⇒ 重要!
※家屋を取り壊して,土地だけを売却してもOKです

空き家を持っている場合 → 厳しくなります

住宅やアパートの敷地については,固定資産税が軽減される仕組みとなっていますが,「特定空家等」に該当すると,この特例が受けられなくなるおそれがあります。
<住宅用地に対する課税標準の特例>
課税標準というのは固定資産税率(1.4%)や都市計画税率(0.3%)をかける対象となる金額のことです。この課税標準が住宅用地の場合は優遇されています。
 〜小規模住宅用地(住宅1戸当たり200㎡まで)〜
  固定資産税 更地の1/6  都市計画税 更地の1/3
 〜一般住宅用地(住宅1戸当たり200㎡を超える部分)〜
  固定資産税 更地の1/3  都市計画税 更地の2/3
住宅用地については固定資産税等が優遇されており,人が住んでいない空家であっても同様のため空家のまま放置しているケースが多くなっています(更地にすると固定資産税があがる)。
<改正点>
そのまま放置すれば倒壊や衛生上有害となるおそれのある空家(「特定空家等」)と判断され,撤去や修繕などの助言・指導のもと改善がされない場合には,「勧告」が出されます。この勧告を受けると,住宅用地の特例から除外されることとなります。除外をされると,固定資産税が最大で6倍になります(従来1/6になっていたため)。
※固定資産税の増税だけにとどまらず,市町村による強制撤去(費用は所有者から徴収)ということもありえます。

※内容につきましては,できるだけ簡略化しておりますので,実際の適用に当たっては事前によくご検討下さい。

2015年11月8日
今回のテーマは「登記できる建物とできない建物」です。土地家屋調査士の奥村忠士が担当します。

建物には、一戸建住宅・アパート・マンション・ビル(店舗)・工場・車庫・物置等いろいろあります。
民法には、「建物とは何か」と規定がなく、不動産登記法にも定義がありません。
民法では,「土地及びその定着物は,不動産とする」とされているので,「土地の定着物」と言えるものしか登記することが出来ません。
建物が登記できるかできないかは、結局のところ、土地に定着している工作物を
法務局の登記官が判断することになっています。定着というくらいですから、ある程度継続して土地に付着して利用されていないとダメなんですね。
例えば、建築工事現場の事務所(仮設的)や耐用年数1年程度のビニールハウス等は登記できません。
また、それ以外のポイントとして
  1. 定着性(基礎工事ができていること)
    ・ 基礎がない物置は登記できない。
  2. 外気分断性(屋根と周壁(3方に囲まれた)があること)
    ・ 柱だけのカーポートは登記できない。
  3. 用途性(取引できる建物かどうか)
    ・その建物が目的とする用途に供しうる状態にあること。つまり、その建物が生活空間を形成し居宅であれ倉庫であれ、その目的に供しうる状態まで完成していなければ登記できません。
    ・ 倉庫なら、天井や床がなくてもその目的に供しうれば、登記できます。
以上のように社会通念上によって判断しますので特殊な建物はお気軽にご相談ください。着工前なら図面で、完成前なら現地の建物を確認してご判断いたします。
登記ができる不動産(建物)かどうかで,遺言書での目的物の特定の仕方,売買契約で対象目的物となっているのかどうか,対抗要件(第三者にも権利を主張できるか)なども違いますので,注意が必要です。
2015年9月6日
今回のテーマは「失敗実例から学ぶ相続対策(2)〜相続財産を共有のまま放置した例」です。不動産鑑定士の山村寛が担当します。

Aさんは4人兄弟の長男です。25年ほど前に父親が亡くなった時の相続では,すべての土地を4兄弟の共有名義にしました。これは4兄弟仲が良いので,いずれそれぞれが後でほしい土地を分ければいい,と考えたのと,当時長期譲渡所得の100万円控除があり,不動産を共有にしておいたほうが売却した時有利ということもあったようです。
3人の弟たちは皆地元を離れており,父親から相続した土地は,地元に残るAさんがすべて管理をしていました。
もともと地元の資産家だけに,古くからの貸地,貸家も多く,管理も大変でAさんは少し整理しようと考えていました。
そんななか,地代が滞りがちだったX社が,突然大きな仕事がとれたとかで,借りている土地を購入したい,との申し出がありました。X社が提示した価格は妥当であり,今まで何度も嫌な思いをして延滞している地代を請求していたAさんはこの機会に土地を売却することを決断し,早速3人の弟たちに連絡しました。土地は四人の共有になっているから全員の同意が必要です。2人の弟は同意しましたが,東京で暮らしているすぐ下の弟Bさんが「土地がそんなに安いわけがない。」という理由で同意しません。地元を出て東京暮らしの長いBさんには,東京の感覚では,地元の地価の安さが理解できなかったようです。何度か説得を試みましたが,どうしても同意が得られず,結局,AさんはX社への土地の売却を断念しました。
最近また,X社の業績が芳しくないようで,地代が延滞しがちになりました。Aさんは,「あの時売却しておけば・・」と後悔されています。もちろん今のX社では土地を購入する資力はありません。毎月末にX社から入金があるか憂鬱です。
そこでここ数年は,Aさんはお盆に兄弟が集まるたびに,弟たちに土地の共有はやめてそれぞれに分けよう,と提案しています。当初は皆真剣に考えていましたが,最近は皆さん高齢化してきて,だんだん考えるのが面倒になり,若い人が考えてくれれば(つまり子供たちの代に解決すれば)いい,と言い出す人が出てきました。4兄弟皆さんそれぞれ子供さんがいますから,いとこは全員で10人を超えます。育った環境も考え方もどんどん離れていきます。だんだん分割は難しくなるのは分かっていますが,Aさんも今では共有関係の解消をあきらめでいます。
現在,借地や借家契約が終了して,返還された土地は,すべて更地のままです。有効活用しようにも,4人の同意が得られる見込みはありませんし,将来分割するときにはいつでも現金化できるよう,更地にしておかざるを得ないのです。
このため,地代,家賃収入が徐々に減少する一方で,固定資産税が増加し,このままでは,持ち出しにならないか,Aさんの悩みは尽きません。
不動産を相続する際,すぐに売却する予定が無ければ,絶対に兄弟の共有は避けるべきです。時間が経てば経つほど,処分がむずかしくなります。Aさんのケースでは兄弟全員が存命中ですが,兄弟や兄弟から相続した甥,姪と連絡がつかなくなったら最悪です。兄弟がもめないようという親心が実は,兄弟の仲を悪くすることにもなりかねません。
2015年8月16日
今回のテーマは「相続による不動産・株式の共有」です。弁護士の木下貴子が担当します。

今回は,弁護士でも間違いやすい「株式」の相続についてお話しします。
具体的な事例で,株式がどのように相続されるのか,考えてみましょう。
株式会社○○会社 総株式数100株 代表取締役のA 60株 後継者予定の長男B 40株所有 この状態で,Aが亡くなりました。
相続人はAの妻C 長男B  二男D の3人です。
この場合,Aの持っていた株式60株は,どうなるのでしょうか?
妻Cの法定相続分は,2分の1なので,30株,長男B,二男Dの法定相続分は,2分の1×2分の1=4分の1なので,各15株ずつ取得する。その結果,Bは元々持っていた株式40株と合わせて55株,妻C30株,二男D15株となり,後継者Bは過半数の株式を取得するので,なんとか会社の意思決定をしていけそう・・・と思いませんか?
ところが,実は,判例上,そのようには考えられていないのです。
結論をおおざっぱに言いますと,相続人Aが持っていた株式60株は当然に分割されるわけではなく,法定相続分で,長男B,妻C,二男Dが「共有する」と考えられているのです。つまり,60株のうちの一株一株を妻Cが2分の1の割合で,長男B,二男Dが各4分の1の割合で共有(準共有)することになるのです。
この場合,どのように相続した60株の株式の議決権を行使するかというと,3人が話し合って過半数の賛成で代表者を決め,その代表者が60株分の株式の議決権を行使できることになります。つまり,後継者予定の長男Bが反対しても,妻Cと二男Dが賛成すれば,60株=会社の総株式の3分の2の議決権が行使でき,取締役の選任,解任などができてしまうのです。
例えば,妻Cが長男Bと当初同居していたけれど,Bの妻とうまくいかず,B夫婦は出て行くことになり,Bに対しては良く思っていない一方,その後,深く交際するようになった二男Dの妻との関係は良好で,会社についても,これからは,Dにやっていって欲しい,などと思っていると,本当にこのようなことが起こりかねないことになります。
この状態を解消するには,長男B,妻C,二男Dで遺産分割協議をし,誰か何株を取得するのか決めることになりますが,先のような事情があると,なかなか協議も難しくなりそうですね。
もし,Aとしては,従業員や今後の会社の展望のため,会社はBが引き継ぐことが適切である,と考えていた場合には,このような事態を防ぐために,生前に「遺言書」を書いておくことが不可欠だったことになります。

ちなみに,どうして,このように考えられているか,裁判所の考え方を見てみると「不動産」の共有問題と同様に考えていることが分かります。
条文で,みていくと,まず,遺産分割前の株式は相続人の準共有状態と考えており,株式の共有について定めた会社法106条の規定に基づき権利行使を行うことになります。そのため,株式の権利を行使する者1人を定めて,会社に対しその者の指名を通知し,その定められた権利行使者が,株主としての権利行使を行うということになります。
この権利行使者を誰にするか,という点について争いになることが考えられるのですが,この権利行使者の指定は,「共有物の管理行為」として、持分価格に従いその過半数で決せられると解されています(最判平成9年1月28日判決,民法252条)。
不動産の場合には,「株式」と比べると,間違えることが比較的少ないのですが,時々,「持分が半分なので,どの場所かは分からないけれど,半分は自分の物として使えるはず」と言われるのですが,正確には,少し,違います。
不動産も,ひとつ(一筆)の土地を相続した場合には,法定相続分で,その土地が当然に分けられて(分筆されて)使える,ということではなく,「準共有」状態となっています。
各相続人は,「ひとつの土地全体」を持分に応じて使えることになります(民法249条)ので,土地の半分だけしか使えない,というのとは異なります。
この場合でも,「管理行為」については,「持分の価格に従い,その過半数で決する」ということになっており(民法252条),株式の権利行使者の指定をすることは,この「管理行為」と考えていることになります。
この状態を解消するには,不動産の場合にも,遺産分割協議で不動産の分け方を決めることになります。この場合に,Xという不動産一筆をCが2分の1,B,Dが各4分の1ずつ共有することにして,登記することもできるのですが,これでは,「準共有」状態が,正式な「共有」状態にかわっただけで,X不動産全体の「管理行為」については,持分の過半数の人で決めていかれてしまう,という状態は変わりません。
ですので,相続後に不動産を貸したい,売りたい,というときには,特別な事情がない限り,遺産分割協議で「共有」状態にしておくことは望ましくないと思います。
共有不動産については,「保存行為」は共有者一人だけででき,「管理行為」は過半数,「変更などの処分行為」は全員の同意が必要とされています。具体的に何が「保存行為」「管理行為」「処分行為」となるかは,また,別の機会にお話ししたいと思います。

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